「私は誰?」だの”Who am I?”だの聞くと、今まで記憶喪失の人が言うもんであんまり私に関係のないように思われるフレーズだった。
しかし!!
なんだか最近は、それがきっと人生続く限りずっと自分に問い続ける質問だという事なのかもと思う。そんな事を気づかせてくれたのは、アメリカの文化か子育てか。
私は東京に生まれ育ち、夫はアメリカの中都市で生まれ育った。お互いの国の文化や言葉に憧れて一緒になった時も、あまりハーフの子供を育てるということに大した危惧感はなかった。ただ漠然と自分達の子は生まれながらにバイリンガルでバイカルチャラルでいいなあ。という程度。ただ、日本の公立学校に入れるのは抵抗があった。東京ではハーフの子達は昔に比べてそんなに珍しくない。それでも純血日本人ではないと、悪い意味の差別を逃れられたとしても特別扱いを受けるのは間違いない。日本特有の単一文化性から放して(”離して”でなく)育てたかった。
そんなら、移民の国アメリカでしょ!世界中のあらゆる人種が混在する自由の国!
うちの子供が社会に溶け込むにはアメリカが正解!!と夫婦で同意。娘1が7歳、娘2が1歳の時に夫の故郷に引っ越ししてきたのであるが。事はそう簡単には運ばなかった!
私なりに子供には気を遣った。例えば、お弁当は奇異な目で見られるかもしれないから持たせずにランチプログラムに登録。お金をそこの口座に振り込んでおけば、日替わりランチが学校の食堂で配られる。メニューはホットドック、ハンバーガー、チキンナゲット、ピザ、マカロニチーズ等、お子様大喜びのハズだったが、日本の手料理(ばあばの絶品煮物含む)で育った彼女には馴染まず。で、お弁当を作ることになるのだが、海苔や鰹節、ふりかけ等、日本のお弁当の定番は魚臭いでNG。 おにぎりも友達に説明しにくく、冷たいご飯を食べているのも珍しがられるので結局サンドイッチに落ち着いた・・と思いきゃ、彼女のお気に入りのキュウリのサンドイッチはアメリカでは珍しかったりして、すでにここの時点で娘1は自分はかなり他と違う感を感じていたらしい。
数年が過ぎ、娘1は高校1年生(注:9年生。日本での中3にあたるが、この地域では9年生から12年生が高校に通う。)の時に鬱病の診断がくだり、治療を始めた。転校と同時に投薬とカウンセリング。そのカウンセリングに私が立ち会う事もあった。そして、そこで聞いたのは彼女の ”誰にも属さない” の苦悩。学校では ”あのアジア人の子” で通ってるらしかった。私から見れば娘1のでかい目と長いまつ毛と栗色の髪は日本人には見えにくいと思っていたが、半分白人、半分アジア人ではアジア人というアメリカ特有の分類の仕方を甘く見ていた!(オバマ大統領だって初めての黒人大統領って言われてたじゃん!!)それは、日本人に見えなかったら日本人にあらずの日本と全く同じ。自分は誰かと聞かれたらアメリカ人と日本人。どちらにもイマイチ100%あてはまらない・・ってホントに「私、誰!?」な娘1。
娘2も毎日「私は誰?」の質問に違う角度からタックルしているようだ。いわゆる”Gen Z” と呼ばれる世代に属する彼女は、スマホ、パソコンが私たちで言う冷蔵庫と同じくらい家にあるのが当たり前の環境で育ち、その情報量ときたら想像を超える。私の世代では考えてもいなかった多数のコンセプトが彼女の日常生活に存在する。2年程前、娘2は12歳。バレエ教室に連れていく車の中で窓の遠くをみつめ彼女が言った。
娘2:「私パンなの。」
私:(心の中で 「食パンとかのパン!?」・・・いやそれにしては、顔が深刻すぎる・・・多分そのパンじゃない・・。)「へえ!パンってなに?どういう物?」
娘2:「パンセクシャル!知らないの!?信じられない!!太古の人なの!?」
私:「聞いた事あるよ・・(ウソ)でもよく分かんないから教えてよ。」
娘2:「パンは誰でも好きなの。男でも、女でもホモでもレズでもトランスジェンダーでも!」
私:「へー そう。いいんじゃない?で、どうするの?これから皆にそう宣言するの?マミーはどうすればいい?」(つか、だから何?)
娘2:「やっぱりマミーに言うんじゃなかった!娘1に言わない方がいいって言われたんだ!」(涙目)
私:「ごめん・・」(何か悪い事言ったか??)
どうやら、娘2は自分のセクシャリティーについてカミングアウトという重要な事をしたらしいという事に気がついたのは結構後になってからだった。
さらに、最近は自分の名前が気に入らず、呼ばれ名を変えたいそうだし、髪の毛を短く切って「これが私らしいの!」とご満悦。ストレートの彼氏を持ち、さらに「嫁」と呼びあう女友達と指輪の交換をして、最近女の子から男の子になった幼馴染の新しい男名と三人称(he)を使う事を私に指示して、日々、自分とは誰かという究極の質問に答えを見出そうと必死になっている。私の世代では、性別も名前も割り当てられた物だったし、セクシュアリティに疑問を持つという事も稀だった。それが、彼女の場合はハーフである所以の民族性、国民性の他に性別、セクシュアリティといった数々のカテゴリーについて考えていかなければならない。なんて大変な人生なんだろう。私の世代が 「2+2=4」というシンプルな数式だとすれば、彼女の世代は超複雑な微分積分とか方程式のようだ。
されば、私自身は「私は誰?」という質問の答えは見つかったのか?もうかれこれ50年生きてんだよ!?でも答えは多分ノーだ。アメリカでアメリカ人にもなれず、なりたくもなく、日本人でも日本にいたくなく、女だが女扱いをされたくもなく、男にもなりたくなくて、セクシュアリティだって突き詰めていけばなんだか怪しいもんだ。”あなたが誰だか教えます!”っていう診断クイズでもあればいいのに。
コメント
こんにちは。
私も若い時にハーフの子供を産みたい!と憧れていましたが、大変な事ですね。
私は誰?と考えた事がなかったので、とても興味深く読ませて頂きました。
私には、アメリカに嫁いで子供がいる姉がいます。私は姉やその子供達が誰であっても心の底から大好きです。
サクマッコさんコメントありがとうございます!自分探しの旅は本当に自分の為だけなんですよね〜。家族や友達はサクマッコさんが言うように「誰であっても心の底から大好き」ですもんね!お姉さんも同じ気持ちだと思います。読んでくれてありがとうございました。