日本人留学生の名前を自分の教えるクラス名簿に見ると、とっても嬉しくなって士気が上がる。それはもちろん私が日本出身だからだが、それよりか昨今、日本人は珍しいのよ!(昔はアジア人留学生は大体日本人でした。)近頃の色んな事情でアメリカは人気ないんだろうなあ(涙)
2020年春、コロナのグローバルパンデミックが始まった。日本人どころか、留学生激減!それでももしかしたら、まだ日本のどこかにアメリカへの留学を考え、世界征服とかの(!?)野望を燃やしている輩がいるかもしれない!っていうわけで、私の見たコロナ禍のアメリカ語学留学の現場では一体何が起こったのか。そして現在はどうなっているのか。そしてこれからどうなるのか。現役インストラクターの勝手な主観で語学留学生に提供したサービスの満足点(100点満点)を学期毎につけてみました!現役留学生、未来の留学生の色々な判断材料の一つにしていただけると嬉しいです。
はじめに
私の教えるプログラムは州立大学に付属の英語学校。初級から上級、大学の単位を取れるコースまで幅広く教えている。大学進学用のプログラムなので、日常英会話とかのクラスはなく学校で使うスキルを得る事を目標にしている。例えば、エッセー(小論文)の書き方、教科書の読み取り、プレゼンの仕方など。最高レベルのクラスをパスすれば修士課程のクラスについていける英語レベルが身に付く(はず。)
もっと細かい事を言うと、1コースは大体4ヶ月(1セメスター)4教科から構成されている(Reading/Writing, Speaking/ Listening, Grammar and elective)。月曜日から木曜日まで8時から12時半。毎日90分x3クラス。金曜日は休み。クラス人数は最大20人。
コロナの始まり:2020年 春学期
2020年3月半ば。コロナがアメリカで騒がれ始めた。待ちに待った春休みに入ってやれやれと思っていた矢先、大学からロックダウンの通知がきた。学校は閉鎖でも全てのクラスはオンラインに移行するとの事。・・つかそんなのどうやんの!?やった事ないし!?とパニックになる間もなく「このツール使ってね〜」「どうにかしてね〜」といったメールが立て続けに送られてきた。大したサポートもなく未知の領域に放り込まれた私と生徒達。最初の2週間はクラスにアクセスできない生徒達への対応サポートに追われ、その後はアクセス出来ても満足に授業を進められない状態が続いた。教材やテストの作り直しで寝る時間もなかった。生徒達は生徒達で勉強どころではなくなっていた。クウェートからの生徒達はクウェート政府の要請で緊急帰国。中国からのある生徒は国のお母さんとお姉さんがコロナにかかってしまいパニック状態。欠席者が増え、進級の有無を決める期末テストも殆ど機能しなかった。最後は次のレベルや成績がどうこうとかではなく生徒の所在確認、安否確認で幕を閉じた。
サービス提供点 of Spring 2020
ロックダウン前の最初の7週間は、大幅なカリキュラムの変更もなく、ベテランのインストラクター達が各々の腕をふるい、生徒達に質の高いクラスを提供していた。
しかし、学校閉鎖に伴ったオンラインクラスはまさにカオス!みんなが勉強どころじゃなかったし、インストラクター側のテクノロジーの知識の有無でかなりクラス進行に差が出たはず。人生の経験値的には貴重な経験ができたと思うが、語学習得となると・・・でも、前半良かったので全体的には60点!
完全オンラインコース:2020年 夏学期
こんな状況でも、そのまま夏学期にもクラスを取りたいと言う学生達も存在した。ここのプログラムにはサウジアラビアからの学生が半数以上を占める(サウジアラビア政府との提携を結んでいるため。)彼らは政府からの期限付きの奨学金をもらっている。夏学期を取らないとその後の予定が狂ってしまうのだ。
夏学期もクラスは100%オンライン。私も少しは慣れてきたものの、まだまだ課題は山積み。わかっている事はコロナ前のクオリティのクラスには絶対に及ばない!最初のハードルは姿の見えない生徒達。私だって、自分の顔をコンピューターの画面で見ながらレクチャーをするのには抵抗があった。でも、教える側はそんな事言ってられない。一方生徒達は何度言ってもカメラをオンにしてくれない。見えない人にコミュニケーションを取り信頼関係を構築するのは、超絶むずかしい。さらに言語のクラスではディスカッション参加が練習の為に必要不可欠。生徒が話してくれないと授業も進まない。以下は毎日あるあるの私。
私:「モハメッド!ここの点についての考えを聞かせて?…モハメッド?いる?聞こえる?モハメーッド?.. じゃ、アリ?…アリ?聞こえる?アリもいないのかな?じゃあアブドゥラ?..ハロー?誰か聞いてる?(私ミュートになってないよね・・。と音声の設定チェック。)もう誰かいるの!?」
モハメッド:「先生、ボク聞こえます。ちょっとトイレに行ってました。何を答えればいいんですか?」
私:「えと・・98ページの真ん中のディスカッション問題の2。カメラオンにして答えて。」
モハメッド:「今、ベッドの中なのでできません。スマホなので教科書も見れません。」
私:「・・・じゃあいいや… サラはどう?いる?聞こえる?ハロー!!」
毎日毎日こんなの!授業なんか進みやしない。カメラオンにしたらご褒美ポイントや宿題免除の特典をつけたり、カメラオフの場合は参加ポイントを減点したりと色々な策を講じたけれど、結局あまり改善せず。中には顔も見た事も、声を聞いたこともない生徒のテスト採点をしてたりして、中間の生徒の成績レポートに 「この生徒は見た事ありません。」と書くことがあった。全く前代未聞。そして毎日の独り相撲にストレスも溜まっていった。テストの時はカンニング防止に生徒のコンピューター画面と顔の録画、室内の音を録音する「バーチャル試験官」のプラグインの導入が始まり、生徒と私の溝は深まるばかり。
サービス提供点 of Summer 2020
結局一つのポイントをクリアするのに、従来のクラスの2倍以上の時間がかかって、ここだけの話、半分またはそれ以上のカリキュラムをクラスによっては消化できず(注:私だけでなく、他の教師も)。生徒と教師のコミュニケーションはもちろん学校生活の醍醐味であるクラスメートとの交流など皆無で、これで生徒たちからコロナ前と同じだけの学費を取るのはかなりの ”RIP OFF” (ぼったくり)感。私の給料は倍にしてもらっても足りなかった感ありだけど。オンラインコースを教える大学の正式な免状も取らねばならなかったし。ま、だいぶ皆がTeamsの扱いにも慣れてきたので50点!(資金と時間が豊富にある人達にはOKかもしれないけれど、私だったらゼッタイ受講しない。)
完全オンラインコース:2020年 秋学期
アメリカの大学で最も生徒数の多い秋学期も全てのクラスはオンラインのため、生徒数激減。特に留学生は入国規制があったりビザが下りなかったりたりと私の英語プログラムは大打撃。クラス数が少ないので、クラスを教える代わりに他の人の手伝いや、人員減らしの為に生じた穴を埋めるために駆り出されストレス満載の学期。それでも仕事があるだけいいやと納得する。この頃になると、生徒が上達しようがクラスが滞ろうが死ぬわけじゃなし。と投げやりな姿勢の教師は私だけでなく、メンタルに異常をきたす教師も続出。会議の議題がマインドフルネスだったりもしてた。教師達が気にしなくなったので、成績のインフレが起こり次のレベルに能力が達していない生徒が進級するケースが続出。
サービス提供点 of Fall 2020
私を含め前学期と同じクラスを教える教師もいたので、その点ではインストラクションの改善があったと思われるので、前学期よりちょっぴりましの55点。
ハイブリッドコース:2021年 春学期
コロナの終息は見えず。でもなんとなくワクチンに期待と(不安)が出てきたこの学期。やっとオンライン講義にも慣れてきたのに、次の新たなる試練はハイブリッド!!(Face to Face (実際に教室で受講)と Online(オンラインクラス)両方やるのでSimultaneous teaching (同時進行)とも呼ばれた。)生徒は人数制限(定員半数以下)のある教室での参加が推奨され、オンラインでも参加可能という聞こえはいいが、教える側にはまさに悪夢!!クラスの生徒に指導しつつオンラインで参加の生徒にも注意を払うという究極のマルチタスキング。必然的に、見えるて聞こえる方に注意が行くのでオンラインの生徒達は置いてけぼりのような状況多発。オンラインの生徒達の面倒を見てればクラスにいる子たちは一時停止の状態になるので集中力が維持できず、一回の授業で何回も仕切り直しをしなくてはならなっかた。テストやプリントも2通り作ったりして仕事時間は一向に減らず。生徒にもベストの環境とは言えず。みんなゴメン。
サービス提供点of Spring 2021
また新たな形態のハイブリッドはオンラインのみとは全然違って、てんやわんやの毎日。生徒も少数を除いては「どーでもえー」態度が顕著。教える側には教室で実際に生徒を見れるのでコミュニケーションがアップしクラスに行くのがちょっと楽しみに。私が嬉しいと生徒にも伝染するのでクラスの雰囲気も先学期よりはマシ。でも全体について考えるとやはり私だったらこんなコース取らねえ感で50点。
元に戻った!?:2021年 秋学期
コロナ患者数激減の傾向を受けて、大体の規制が解除された。教室の定員数も元通り、マスク着用も強制されず。生徒の数も増えてきた。月曜日から水曜日は教室での授業。木曜日は全クラスオンライン。大分ハイブリッドクラスにも慣れてきた。しかし!夏の間に辞職したベテラン教師が続出!15年以上勤めた正規雇用の教師達がバンバン辞めていった。原因は精神的なものがメインだったのだろうと思う。しかしプログラム自体は出費を避けるため非常勤講師を穴埋めにしたので、はたまた現場はしっちゃかめっちゃか。私も無償で新人研修に何度となく駆り出された。新入教師に生徒も困惑。何よりも教える側からすると、密室に20人近くの生徒(窓なし)がいるのは恐怖!若い子達はコロナの危機感度がとっても低い。それにこの州ではマスク着用が義務付けられていないので、しない子もいる。私は学期初めから「私の年齢と喘息の持病を考えてお願いだからマスクをして!私が死んだらマスクしてなかったあなた達は一生苦い思い出をすることになるよ!」と半ば強制的にマスク着用を勧めた。いつもマスクの箱を持ち歩いて、してない子には無言で突きつけた。ま、無事に終わったけど。良い事は今までのカリキュラムが順調にカバーできたということ。生徒達の笑顔も見れて先生幸せ〜多分生徒も幸せ〜…多分。
サービス提供点 of Fall 2021
感染の恐怖をうまくコントロールできれば、ストレス度はかなり下がったこの学期。ハイブリッドにも慣れてきたし(まだオンラインのみの生徒が数人いた)、教えるリズムも掴めてきたし、とりあえず生徒の「学びの喜び」を優先にしたら自然とカリキュラムも生徒のペースに合わせてカバーできた。生徒達から優しい言葉もたくさんかけてもらえたし手ごたえあり!の学期だった。ここにきてパンデミック以来始めてのサービス提供最高点78点!80点に届かないのはプログラム全体で見たらパンデミック前のクオリティーには程遠いということ。
2022年の予想
2ヶ月前、2022年春学期は完全にパンデミック前に戻ると聞かされた。これからはオンラインの受講はなし。会議も会議室で参加。今まで制限されていたイベントやサークル活動なども従来通り行われる。閉鎖または定員・時間制限されていたカフェやレストランが営業再開!キャンパスに活気が戻ってくる!トンネルの出口が見えた!と思った矢先のオミクロン…個人的にはあまり心配していないが、メディアに煽られた国や自治体がどういう反応をしてくるのかは予想がつかない。私の大学では2週間ほど前に公衆衛生科と疫学科の教授のメッセージが校内メールで回ってきた。彼らによると「Covid-19は劇的になくなるわけではない。これから数ヶ月をかけて風邪のビールス程度になっていくと予想される。あまり心配しないで今までの習慣(手洗い、マスク着用、ワクチン接種等)を続ける事が大事」みたいな内容だった。と言うことは学校側は、「オミクロンがあったって来学期からは普通だからね!」というメッセージじゃないだろうか。ならば少なくとも来学期の始めは通常に戻る事が予想される。もしそうなったら、私は毎日学校の教室で生徒を教えることになる。教える事に問題はない。学期中のどこででもオンラインのクラスに移行したら対応できる自信がある。
近いうちに留学を考えている人は、今してもかなりの確率でいいと思う。教える側も経験値が上がっているし、学べる環境は整っている。ただ、再び学校が閉鎖された時に知る人のいない、友達の出来ない環境環境で生活するのはかなりしんどい。留学するメリットは学校で得る知識だけではないし、むしろ異なる文化を自分の肌で感じるという事が大事なのだと思う。勉強だけしたければ、どこででも出来るのだし(Youtube最近すごい…。)それよりも異国で、クラスを受講する以外は一人で部屋に閉じこもっていると言うのは精神衛生上も非常に良くないし、留学の効果も半減する。なので、もしこっちに学校閉鎖前に来たら何はともかく友達作りを最優先する事がオススメ!’健全な心と体がないと留学生活は地獄です。
おわりに
父がよく、「物事には柔軟に対処」と言っていた。プランAがダメでも、プランBだって、プランしてないZだってある。大事なのは適応力だ。今ある物で間に合わせて、最大限の利益と最小限の不利益を作り出す。リスクもあるけれど、色んなシナリオを考えて柔軟に行動すれば最高の経験が出来る。私的には来年は留学生に明るいと思う。ただ、入学許可、ビザ、I-92やその他諸々の書類の発行には国や学校によってこれまで以上に時間がかかるし各国の水際対策もコロコロ変わっている。情報収集を頻繁にして余裕のある計画を立てるのがいいと思う。最後に私の口癖、究極のアドバイスで終わります(Nikeがスローガンにしてるやつ!)JUST DO IT! (とりあえずやっとけ!)
長い長い文を読んでくれてありがとうございました。